人件費は、新人から2年目に担当する機会が多い科目となります。この科目は、大きなエラーが見つかることはほとんどないですが、それなりにやりごたえのある科目です。

以前は、ペイロールテストといって、サンプルとなる人員を抽出して、抽出された人員の就業時間数の管理から、社会保険の算定、給与の支払い、仕訳記帳までの流れが適切に行われているかを確認する手続きが要となっていましたが、最近はペイロールテストという用語を知らない会計士も増えるくらい廃れた手続きとなりました。

近年、多く用いられるのは、分析的実証手続きとなります。人件費で用いられる分析的実証手続きは、所謂、一人当たり給与や一人当たり賞与、一人当たり役員報酬、法定福利費分析などになります。役員報酬は、個人単位で単価が大きく異なるため、一人当たり分析の対象としてはあまり適切ではありませんが、人数が固定されており、概ね役職に応じて役員報酬が決定され、人が変わっても報酬額は役職連動で変わらない場合などには、適合することもあります。一人当たり分析からは脱線していますが、役員報酬は、総額の範囲内で適法に処理されていることの確認や定期同額で計上され、次年度との大きな変動がないことの確認で足りることも多いです。また、オーナー経営者に巨額の報酬を支払っている場合には、この部分のみサンプルを抽出してバウチングを実施することもありかと思います。

一人当たり給与や賞与の分析では、よくあるパターンとしては、前年度の一人当たり給与や賞与の金額に、当年度の人員数を乗じて推定値を算定します。この方法は、かなり簡便なため、多様される傾向になると思いますが、業績連動給部分が多い場合等は、簡単に分析が終わらないことも多いです。うまく分析を終えることができない場合は、少しづつ細分化して、差異額を合計する方法によることになります。

法定福利費分析は、2つのパターンがあります。まず、ちょっとだけ手間のかかる方法ですが、会社が利用している各法定福利費の会社負担分の料率を内訳別に合算し、推定法定福利費率を算定したうえで、当期の給与総額や賞与総額に乗じて算定する方法となります。この方法による場合、個別のズレる事情を適切に把握しないとうまく推定値と実績値が近似しないことがあります。もう一つの方法は、一人当たり給与計算に類似する仮定を置く方法です。前期の人件費全体に対する法定福利費率を算定し、当期の人件費金額に乗じることによって、推定値を算定します。この方法では、料率の変更があった場合や、期中での大量の入退社が発生した場合に推定値がうまく実績値と合わない可能性があります。

いずれにせよ、人件費は間違うと従業員からクレームが来ることになりますので、多額のエラーが検出される可能性は低いといえます。ただし上場準備会社などでは、残業代が現金主義で計上されていたり、給与本体が現金主義で計上されていたりといった、計上時期のズレはたまに検出されます。また、法定福利費関係の貸借対照表残高の処理が誤っているということも散見されます。月末が休日であることや季節的な本給の変動、賞与の支給などの妥当な理由で、貸借対照表科目の残高が大きく変動したり、会計処理の誤りによってって大きく変動したりと、残高の変動要因は多岐に渡りますが、この辺りを適切に把握しないと誤った処理を見落とす可能性があります。

 

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