仕入・原価計算や在庫・仕入債務は表裏一体のため、一般に同一の担当者が担当します。特に、原価計算はブラックボックス化し易いため、適切なヒアリングに基づいて、原価計算の仕組みを確かめ、適切な検証を行う必要がありますが、この部分の監査手続きは足りていないことが多いように思われます。期末で原価計算の仕組みを調べるのは時間的な制約からなかなか難しいため、期中において、原価計算ロジックの確認を行っておく必要があります。原価計算の方法によっては、在庫が増加させ、費用を繰り越すことにより、利益を増加させるということができますので、不正リスクは高いといえます。このような不正リスクがあるわりに、なんとなく、原価計算に対する監査は甘いように個人的には思います。原価計算ロジックの検証に当たっては、各科目の内容の把握も重要になります。本来的には、原価として計上するものが販管費に入っていたり、販管費として計上するものが原価に入り、在庫として繰り越されていたりする可能性があります。また、性質によっては、売上とネットするようなものがあったりします。

仕入、原価については期中にバウチングを行わないと分量が多いため、期末監査は大変なことになります。期末監査では、他の科目と同様にリードで科目単位の増減分析を行い、その下で仕入先毎の増減分析を実施します。リードに仕入れの計上基準を明確にしておくと良いかと思います。仕入れの計上基準が明確でないと仕入れ科目の監査はできないといっても過言はありません。

仕入債務については、基本的には確認状の発送により確認を行いますが、確認状による確認が適さない場合には、通常の証憑突合によることもあります。なお、仕入債務は負債項目ですので、網羅性の検証が重要なアサーションとなります。網羅性の検証は手続きとしては難しいですが、難しいからといって、網羅性部分のアサーションを無視するのはいかがなものかと常々思っております。網羅性の検証方法はいくつかありますが、経営者確認書は網羅性の検証手続きの一つといえます。それ以外に、一般にアンレコチェックと言われる手続きが、主な網羅性の検証手続きになります。期末日後に届いた請求書の束から期末日前に取り込むものの取り込み漏れがないことを確認する手続きになります。翌月の元帳から一定金額以上の取引を取り出して請求書とチェックするような手続きと合わせて実施するとより有効な手続きとなります。また、ブランク確認状により、発送した仕入先内での網羅性の確認ができますし、確認状の発送母集団を仕入先マスタとして、残高がゼロや少額の取引先まで発送を行うと、これも網羅性の確認に有効ですが、一般にこのような抽出が行われることはありません。このような抽出法は、よほど、不正リスクが高いなどの場合以外は行われないのかもしれません。