欠損金の繰戻しによる還付

欠損金の繰戻しによる還付制度は、原則として、青色申告書である確定申告書を提出する中小企業者等の事業年度に欠損金額が生じた場合(以下、この事業年度を「欠損事業年度」といいます。)において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(以下「還付所得事業年度」といいます。)に繰り戻して法人税額の還付を請求できるというものです。
あくまで中小事業者向けの制度ですので、一般に上場会社等では、当該制度の適用を受けられません。

もう少し、簡単にいいますと、前年に利益が出て税金を納付したけれども、当年度は、赤字であったので、この赤字の範囲内で、当年度に、前年度に納付した税金を取り戻すことができるという制度になります。
今後、繰越欠損金が消える見込みがない会社であれば、欠損金の消化により、消化年度の税金の支払いが減るという形で、税金を取り戻すことができ、税理士としての作業ボリュームが増加することから、この制度の利用を積極的にご提案しない税理士の先生は多いと思いますが、将来は不確実ですし、金額が大きくなる場合には、早めに取り戻しておきたいと考える経営者の方も多いと思います。
このような事例に当たる場合で、税理士の先生がこの制度の利用を選択肢としてご提案して頂けない場合は、自ら伺ってみてはいかがでしょうか。

繰り返しになりますが、前年に税金を支払って、当年度は、税金の支払いがない会社は、対象となる可能性があります。なお、確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること。という要件がありますのでご注意下さい。

また、国税部分についての制度であり、ちほう地方税については欠損金の繰り戻し還付という制度はありません。繰り戻し還付制度を利用した場合には、国税の繰り越し欠損金の金額と地方税の繰り越し欠損金の金額に差異が発生するというちょっと特殊な状況が生まれることにはなります。ただし、このあたりは、事業主の方が気にする必要はなく、税理士が把握していれば良いのかなというところになります。以前、私が申告をしている会社にて、ちょっと特殊なクライアントで、地方税の均等割りがある事情により発生しないという会社がありました。この会社は、大幅な赤字を継続していたので、地方税の納付が一切ないのですが、地方税の申告書に繰越欠損金の別表があることから地方税の申告も行っておりました。ところが、地方税の納付がゼロであるならば、申告をおこなってもらっては困るという連絡が都税事務所から届き、申告の取下げ書を提出してほしいという話になりました。欠損金については、国税の申告書に依拠をするので地方税の申告書は不要との話でしたが、欠損金の繰り戻し還付によって、国税と地方税の欠損金の金額にズレが生じるケースがあることを失念している話だと思います。