記帳代行ってなに?

税理士のホームページを見ていると「記帳代行」という用語がよく出てきます。はて、「記帳代行」ってなんでしょうか?
法人事業主の皆さんが税理士に業務を依頼するのは主に事業の業績を税務署に申告をする業務になると思います。日本の法人は確定決算主義という制度を取っておりますので、税務署にこれだけ税金を納めることになりますという法人税の申告書を提出するために、まずは企業の業績を会計帳簿に「記帳」することが必要となります。確定決算主義というのは、企業が記帳をした最終的に確定した会計帳簿に基づいて、税務署に提出する申告書を作成するという考え方になります。また、個人事業主の方は、所得税の申告をする必要がありますが、事業主の方は、事業所得というものが発生するため、事業所得の申告を行いますが、この事業所得の数値も会計帳簿に基づいて申告されることになります。
はい。ここで「記帳」という単語が出てきました!「記帳」というのは会計帳簿に取引を記載することになります。最近は、様々な会計システムがありますので、昔のように手書きで紙に記載をするということはなく、弥生会計、勘定奉行、PCA会計のような会計システムにパソコンから入力をすると、会計帳簿が出来上がり、会社の財産状態や経営成績を表す貸借対照表や損益計算書がボタンを押せば自動で作成されるということになります。ここ5年くらいの間にクラウド会計型のシステムが開発されており、MFクラウド会計やfreeeなどのクラウド会計システムが流行ってきています。MFクラウド会計、freeeのいずれの開発会社も上場を果たしています。
さて、ここで「記帳」を行うためには、昔のように紙の帳簿に手書きで記載をする場合はもちろん、弥生会計、勘定奉行などのパソコンにインストールするタイプの会計システムでも簿記の知識が必要となります。そのため、法人の経営者であれ、個人の経営者であれ、いずれにせよ簿記の勉強をして会計帳簿を作成する必要が出てきます。
税理士は、会計帳簿に基づいて税務署などへの税金の申告を行うことを独占業務としている人であることから、本来は依頼主より会計帳簿を受け取って、それに基づいて申告を行えば良いのですが、依頼主が皆さん簿記の勉強をして、「記帳」まで行ってくれる方だけではありません。そこで、「記帳」を依頼主の皆さんに代わって行うのが、「記帳代行」ということになります。「記帳」は実はそれほど難しいものではないのですが、とにかく時間がかかる業務になります。事業者が行う取引の数だけ「記帳」=仕訳をきるという行為が必要となることから膨大な単純作業の時間が発生することになります。実は、税理士にとってはかなり苦痛な仕事の一つとなります。この部分が実は難しくないので、パートの方を雇ったり、大きくやる場合には、田舎や海外の賃金水準が安いところに記帳代行会社を作ってそこで記帳のみ行うという税理士もいます。
最近流行りのMFクラウド会計やfreeeなどのクラウド会計システムは、この「記帳代行」部分をシステムの自動記帳の力を借りて、事業主の方が一部自前で「記帳」を行うという形態のシステムになります。ただし、そもそも簿記がわからない方がこれらのクラウド会計システムを用いた場合には、どうしても一部よくわからないという部分が出てきます。この部分は、顧問税理士のヘルプが必要となりますが、税理士としては、苦行ともいえる「記帳」を自ら行わなくて良いようになれば、それ以外の付加価値業務に注力をする時間が増えるため、良いのではないかと思います。ただ、昔ながらの弥生会計や勘定奉行も非常に優秀な仕組みでありますので、これから会計システムがどのように進化して行くのかというのは税理士としてとても楽しみな部分となります。
今後の税理士業務は、システムによって作成された会計資料に基づいて、会社経営について数値的な助言を行うコンサルティング業務にシフトをしていくのではないかと個人的に思っています。