監査のいろは「税効果会計」

税効果会計は、公認会計士でもよくわかっていない人が多いです。そこそこベテランの方でもよくわからないまま来ている人が多いような気がします。税効果会計は、会計上の利益と税務上の利益に差異がある場合にこれを適切に調整することにより適正な期間損益計算を行う処理になりますので、税法会計だけ考える会社で税効果会計を適用するのはナンセンスということになります。そのため、基本的には、上場準備会社、会社法上の大会社で公認会計士による会社法監査を受ける会社、上場会社などでの適用に限定されることになります。上場準備会社で監査法人が行って、まず指摘をするのが税効果会計の未適用になりますが、適用されていないのが当たり前ということになります。

会計上の利益と税務上の利益との差異には、一時差異と永久差異があります。永久差異は会計又は税務のいずれかで計上が認められない損益であり、その差異が永久に解消しない差異であり、一時差異は、会計上の計上時期と税務上の計上時期が異なることによる計上時期のズレによる差異であり、その差異が将来解消する時に、課税所得が減算される一時差異を将来減算一時差異と言い、その差異が将来解消する時に、課税所得が加算される一時差異を将来加算一時差異と言います。日本の税制の特徴より、日本においては、将来減算一時差異が発生することが多く、将来加算一時差異が発生することは比較的少ないです。企業会計基準適用指針第 26 号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」という会計基準が出ておりまして、税効果会計は、見積もりの要素がある会計基準ではありますが、この会計基準において、詳細にルールが定められています。そのため、実質的な見積もりの要素は小さく、基準通りの処理を行っていないと明らかに間違った会計処理をしてしまうことになるという会計士としては非常の怖い部分になります。おそらく、会計士が判断を誤る可能性が最も高い会計処理と思います。

さて、税効果会計に関する会計基準によると、将来減算一時差異によって発生する繰延税金資産については、繰延税金資産を取り崩す時の課税の繰り延べ効果がない場合=将来の税額を減額する効果がない場合には、損失の繰り延べを行ってしまうことになることから繰延税金資産の計上については、慎重な対応が求められ、会計基準によって詳細なルールが定められている。繰延税金資産の計上については、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際には、5分類を定めてルール化しています。他方、将来減算一時差異に基づいて発生する繰延税金負債については、会社の閉鎖が決まっているようなケース以外は繰延税金負債を計上する必要がある旨が記載されている。おそらく、繰延税金負債については、保守的な観点より、損失の先取りについては将来効果がなくなったとしても良いとの発想があると思われます。

以下によくある税効果会計の適用誤りについて記載します。

①繰延税金負債の計上に分類の影響を反映させてしまっているケース・・ 税効果の5分類は、繰延税金資産について収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際に適用されるものであり、繰延税金負債に分類の適用はない。

②分類5において、スケジューリング可能な将来加算一時差異と将来減算一時差異が相殺適状にあるにも関わらず、相殺可能な将来減算一時差異部分の繰延税金資産の計上漏れ・・このようなケースにおいては、分類5であっても相殺可能な繰延税金負債に対応する繰延税金資産は計上する必要がある。基準上では将来減算一時差異と将来加算一時差異の相殺は、収益力に基づいて回収可能性より前に判断が求められています。理論的にも当然の処理となります。

③税効果会計の基準においては、分類5が適用されるケースはかなり限定的に定められているが、分類5に該当しないにも関わらず分類5とすることにより、本来分類4であった場合の1年分の繰延税金資産の計上がすべて漏れてしまっているケース・・昔は、保守的に分類5にしておけば良いとの発想が世の中の多数を占めていたためこのエラーも比較的多く存在しており、金額的な影響が大きいと思われます。

④減価償却費や退職給付費用などの長期の差異や減損損失の取り扱いなど、基準上で特に明記されている部分の基準の扱いとの不整合・・会計基準上では、減価償却費等は特殊な扱いが求められています。なお、減損損失は減価償却費とは異なる扱いが求められます。

⑤企業結合によって発生した一時差異・・企業結合によって発生した一時差異については、税効果会計の適用がなされないケースがあるが税効果会計を適用している。または税効果会計の適用が求められるケースで税効果会計の適用が漏れている。

上記のうち、⑤は本当に難しいし重箱の隅なのですが、それ以外は会計士が見落とすと明らかにミスになるように思われます。ほかにもいろいろなエラーの発生可能性があります。